101匹足利尊氏 さんの感想・評価
3.9
親心いつも子知らずな函館ミステリー
【物語 3.5点】
主要キャラクターが黒の組織関連など以外は、ほぼ全員集合したお祭り映画。
函館・五稜郭、土方歳三絡みのお宝を巡る怪盗キッドに、
告白絶景スポットの宝庫・函館にて、今度こそ和葉に想いを伝えようと力むw西の名探偵・服部平次。
二者を軸に、多くの登場人物に出番を与えるためか、
事件解決もコナンらの頭脳から導き出される推理よりも、
豊富な人脈から偶発的にもたらされるヒントとなり得る情報を、
雑学知識豊富なコナンらが事件を解く鍵に無理やり変形加工して強引に突破口を切り開く感じ。
各キャラの得意分野で見せ場を作るためか、
やたら“泳がせる”展開が多かったのも合理性を欠いたリスクオンに感じました。
よってミステリーとしては大味となるのでしょうが、
刀剣などを活用したパズル要素のある謎解きもあって、
それなりの知恵熱で脳に程良い汗はかけましたし。
事件に仕込まれた父と子の人情ドラマ(※ネタバレレビューを読む )も良好なテーマ。
告白でも、家業でも、男という生き物は見栄っ張りで中々本音をこぼさないもの。
母と娘なら思い詰める前にどうにかなる事も、父子が絡むと煮詰まって事件に
発展してしまいます。
終わってみれば恋に事件にアクションに。
エンドロール後まで気になる要素が数多く詰まった、
エンタメ祭りとしては上々の興行でした。
【作画 4.0点】
アニメーション制作・トムス・エンタテイメント
平次から和葉への告白絶景スポット探しなどと称して、
スクリーンに花開く函館・北海道聖地ゴリ押しアニメw
エンドロールでは例のごとくロケ地の実写映像で締める念の入れよう。
函館推し度という意味では史上最強アニメなのではないでしょうか。
ただ、ここまでゴリ押されても、北海道に憧憬を抱く私には不快感は少なく、
むしろアニメでも実写でも五稜郭の桜きれいだったなぁ~という満足感が残りましたし、
海が見える坂道と市電を絡めたアクションシーンも絵になっていました。
劇場版『コナン』を観る度に地味に凄いと感心するのが、
最新のIT機器、機能を使いこなすコナンたち。
本作では電子ホワイトボードを活用した捜査会議が印象的でした。
ミステリーや恋愛要素が絡む作品の中には、例えば携帯をガラケーからスマホにすると、
個人情報スキルの向上で、トリックや駆け引きのシナリオが破綻する等のリスクから、
長期連載で当初の世界観設定が時代遅れになっても、リメイクしても、
ガラケーのままという作品も結構あったりして。
貪欲に技術革新を取り込むコナンたちの柔軟さが案外、作品長寿の秘訣なのではないでしょうか。
今回はネタバレレビューを読む
【キャラ 4.0点】
2017年の劇場版『から紅の恋歌(ラブレター)』向けに登場し、
平次と和葉の間に割って入ってトライアングル形成を強行せんとした、
かるたチャンプ・大岡紅葉が、平次の恋路をややこしくするため、
本作でも上空より飛来w
怪盗キッドといい、ヘリに乗ったお嬢様・紅葉といい、
空飛ぶキャラは、お祭りでこんがらがったシナリオを力技で打開するのに便利な飛び道具ですw
そもそもキッドも平次から“キスの恨み”を抱かれているようですし。
さらに事件の鍵も握る居合道の達人・福城聖(ひじり)も和葉にグイグイ迫り……。
恋の行方は混迷の一途w
平次の告白の険しさに比べれば、一連の刀剣争奪騒動など大した問題じゃないように思えて来て、
海外からわざわざ来日したのに、アクションシーンを盛り上げる噛ませ犬になった死の商人軍団が何か不憫でしたw
【声優 4.0点】
土方歳三が関係する今回の事件。
土方役を務めたのは津田 健次郎さん。
アニメ『ゴールデンカムイ』の尾形役などで土方と対峙を重ねたツダケンもついに鬼の副長に!
と思いきや、イケメン土方役は乙女ゲーで既に経験済みとのことでw
津田さんはネタバレレビューを読む も兼任し青山ユニバースな遊び心をアクションシーンに付加。
ゲストとして登場したのがネタバレレビューを読む
人を欺く演技にも定評がある俳優を際どいポジションに配役し鑑賞者に考え込ませる。
こういうゲスト俳優なら歓迎です。
【音楽 4.0点】
劇伴担当は劇場版『コナン』3作連続の菅野 祐悟氏。
出だしからメインテーマに和楽器をアレンジし、今回は日本史絡みに合わせて和風重視かなとも思いましたが、
結局、徐々に恐慌も煽る『PSYCHO-PASS』な菅野節でアクションを彩る。
一方で恋愛ラブコメ対応では、ピアノやストリングス等を駆使してムードを演出。
ED主題歌はaikoさんが「相思相愛」で『コナン』と初タイアップ。
内容は勿論ド直球なラブバラード。
この起用からして本作のクライマックスが事件より恋愛だということは明白です。